世界が魅了されたシャネルの「黒」

ココ・シャネルが起こした革命の中のひとつに、「色の革命」がある。 シャネルのシンボルカラー「黒」である。

シャネルが登場する前の女性たちのドレスと言えば、モーヴやピンクといった 美しい色が主流であった。シャネルはこの色彩のゴージャスに、反抗するよう な形で、黒を選び取った。それまで喪服にしか使われることのなかった黒を、 女性たちに着せてみせると宣言し、その決意どおりシャネルは「黒」を流行ら せた。もっともゴージャスから遠いい色が新しい世紀のカラーとして受け入れ られたのだ。

シンプルであること、実用的であること、かつエレガンスでること。「黒」は、 女性たちの生き方の中においてそれを実現化した。時代と共に、外に出て自身 の手と脚で働きはじめようとする女性たちにとって、まさに必要不可欠な色で あった。シャネルは、19世紀、それまで飾り物であったような女性が、街中 を風を切って自分の意志で歩くことのできるような、絶対的にシンプルな「黒 」を選んだ。彼女は新世紀を先取りし、世界を魅了したが、「黒」に対し、こう も言っている。「黒を着こなすことはとても難しい」エレガンスを着こなすこ とは簡単ではないということだ。財力の誇示や、お飾りとしての「おしゃれ」 ではなく、個人個人のセンスと創意に成り立つモダンたる「おしゃれ」は、見 せびらかすものではなく、自分自身のためのものであるのだ。シャネルは、フ ァッションの形状だけでなく、色彩からでさえも女性たちを「自由」にし、「お しゃれ」とは、誰のためにあるべきかを、世の中に説いた。 シャネルの「黒」には、そんな歴史が紡がれている。