謎の多い幼少期

1883年8月19日シャネルの創設者、ココ・シャネルの生い立ちは、ベールに包 まれている部分が多い。なぜかというと、彼女自身が多くは語たりたがらず、 隠された幼少期であったからだ。彼女は隠すことが困難であると考えると、さ らに嘘を覆い被せ自分自身の人生を作り話で置き換えていった。そういった行 いさえもが彼女の複雑な生い立ちを物語っているようだ。

行商人の父親と母親を持つシャネは5人兄弟の次女としてフランスのに生まれ た。父親は家庭を省みず、母親が33歳の時に苦労を重ねたのちに病死してし まう。シャネルが11歳の時であった。シャネルと姉は、孤児院に、弟は養子 に、2人の妹は親族にそれぞれ預けられる。しかしその後、5人の子どもたち の前に父親が姿を現すことはなかった。

本名「ココ」と呼ばれたのは愛称で、孤児院を出た18歳の時に、歌手をめざし 歌っていた酒場での愛称である。だが周囲には、父親がつけた愛称なのだと出 生を隠すかのように語っていたこともあった。

幼少期、シャネルが過ごした孤児院での厳しい境遇は、のちに彼女がファッシ ョン業界にて偉業をなし得る上で重要な経験となってくる。彼女が築きあげた シャネルスタイルは、まさに、見せかけのきらびやかさを嫌い、古き良き伝統 を長く重んじるような孤児院の片田舎の空気とともに、彼女が肌で覚えた感覚 である。孤児院での厳しい生活の中で、裁縫を仕込まれ、図書館では読書に没 頭し、恵まれない境遇から「自由」を逞しく夢見る力を手に入れたのだ。